吸血鬼ノスフェラトゥ 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
吸血鬼映画として超個性的なインパクトが強い。
吸血鬼の造型が奇怪で不気味で凄まじい。
吸血鬼の役者の怪演振りが半端じゃなくオゾマシイ。
吸血鬼物としてこれを上回るゴシック・ホラーは未だに出ていない。
「魔人ドラキュラ」(30)、「吸血鬼ドラキュラ」(57)も傑作ですが、個人的にはやはり本作の魅力には勝てない。兎に角 恐怖感、緊迫感、ゲテ物感、気色悪さ、そして滑稽な妖しい雰囲気感さえ(特に棺桶を抱えてうろつく姿が最高!)醸し出す演出効果が圧巻で他を寄せ付けないのだ。
リメイク版「ノスフェラトゥ」(78)も頑張っている(キンスキーとアジャーニの好演、秀作。)が本作には届かない。
吸血鬼ノスフェラトゥ 《IVC BEST SELECTION》 [DVD] 関連情報
吸血鬼をあつかったホラー映画の元祖です。
ブラム・ストーカーの長篇小説『吸血鬼ドラキュラ』の最初の映画化作品。
1922年制作のフリードリヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ監督のモノクロ無声映画ですが、単に映画史的な価値があるだけではなくて、当時の技術の稚拙さをこえた映像表現の凄みには、おもわず心を鷲づかみにされる。
キャラクターとディテールの薄気味悪さは、なかなかのものですよ。
後世におよぼした影響も測り知れないものがあり、映画ファンならば一度観ておいて損はない古典的名作だとおもいます。
本来の字幕はドイツ語ですが、このDVDは英語版。
パブリックドメインの廉価な商品とはいうものの、翻訳は特に問題ありませんでした。
画質はまあ時代相応かなあ。
BGMも悪くないでしょう。
英語版では登場人物の名前を原作小説に忠実な表記に勝手に戻してあるので、むしろ親しみやすいのではないかしら。
吸血鬼ノスフェラトゥ 新訳版 [DVD] 関連情報
ドラキュラを題材にした史上初の映画である。では、何故タイトルがドラキュラではなくノスフェラトゥなのかというと、「吸血鬼ドラキュラ」の著者であるブラム・ストーカーの未亡人から映像化の許可が出なかったため、ストーリーを少し変更し、登場人物の名前も変えて勝手に映画化してしまったのだ。そのためドラキュラ伯爵はオルロック伯爵という名前になっている。しかし、いくつか別版が出ていて、モノによっては字幕がドラキュラとなっているものもあるという話である。
オルロック伯爵は針金のように痩せ細り、前歯(出っ歯)が2枚、爪は不気味に伸びている。現在のイメージでのドラキュラ伯爵というと正装にマントが似合って人間を一目で魅了する不思議な魅力を持った人物として描かれるが、本作でのオルロック伯爵(ドラキュラ)は不気味で、途中の船のシーンで大量に登場するネズミやペストといった単語からもネズミが連想される。
やはり100年近く前の作品であるため、恐怖描写のピントがずれている。町中を棺桶を担いだオルロック伯爵が歩き回るシーンは不気味っちゃ不気味、笑けるっちゃ笑ける。
本作は公開後、余りにも怖い映画としてヒットしたのだが、ブラム・ストーカーの未亡人が訴訟を起こし、裁判所も「これは明らかに盗作である」という判決を下し、フィルムが回収されたため、長いこと幻の映画となっていた。日本でも公開されていない。偶然保管されていたフィルムが発見され、こうして観ることが出来るようになった。100年前の作品なので正直怖くない。だが、ドイツ表現主義の作り出した映像美は現在でも通じるところがある。
残念なのは当時のフィルムは感度が低かったので夜間撮影が出来ず、昼間撮影したシーンばかりということだろうか。日光が大敵のはずなオルロック伯爵がどう見ても昼のシーンで屋外にいるというのは違和感を覚えてしまう。
吸血鬼ノスフェラトゥ [DVD] 関連情報
不条理である。悲劇の終焉のために、ヒロインの決意が悲しくも駆け上がるが、突き落とされる。初めて観たときは、2日くらいまともな会話が出来なくなった。ヴェルナー・ヘルツォーク初体験の記念碑的な作品。
黒と白の抑制された色彩。寂しい海辺を歩く夫婦の絵画的な美しさ。山頂に向かう道のりで聞こえてくる『ラインの黄金』(ヴァーグナー)。老人のようなキンスキーのドラキュラ伯爵。絶命した船長に操られてやってきた帆船の不気味さ。ヒロインのアジャーニも濃いメイクで死人か幽霊のよう。広場では死を逃れられない人々の酒宴が始まるが、やがて人々は消え去り、その食卓は無数のねずみが覆いつくす。(『アギーレ・神の怒り』のラスト、アギーレの筏の無力なテナガザルの「軍隊」のように'''。)
「死」と云うものが、実は「日常」のほんのわずかな延長でしかないことに気がつき愕然としてしまう。激しい無力感に襲われてしまう。だが、死ぬことが解っていながら、そのことを忘れていられる我々「健常人」は、不死の吸血鬼よりも不気味である。
キンスキーとアジャーニは、最も好きな男優と女優であり、極めて善良で、なおかつ悲劇的な存在、アウトサイダァである。
アンドレイ・タルコフスキー初体験の『惑星ソラリス』、ジョン・ブアマン初体験の『エクソシスト2』にも匹敵するショックを受けた。
ノスフェラトゥ [DVD] 関連情報
吸血鬼ノスフェラートゥ 恐怖の交響曲 (F.W.ムルナウ コレクション/クリティカル・エディション) [DVD]
今まで流通していた『吸血鬼ノスフェラトゥ』の画質のレベル、また、DVDを名乗りながら、しかも大手の会社でいまいち綺麗じゃないなあという気合の入ってないDVDの画質と比べれば、HD-リマスターを名乗ってもいいぐらいのレベルです。
自分は2000年代初頭にBS2衛星映画劇場で、おどろおどろしくどよーんとした音楽と弁士の音声入りで見たので、本DVDの音楽等に最初は違和感がありましたが、これはこれでイイ!
クラシック音楽やディズニー古典映画を見るような感覚で、芸術的に、まったりと堪能することが出来ます。
圧倒的に映像がクリアに、そして傷がなくなったせいで気付いただけかもしれませんが、「あれっ?こんな場面あったっけ?」とBS2で鑑賞した時には気付かなかったような場面も所々ありました。
私の記憶では滞在初日の夜が明けると首に傷跡があったような気がしていたんですが、初日にはなんともなく、フッターは普通に朝を堪能し、郵便を頼むが黙って通り過ぎられ、不安がよぎる、といった場面になっていました。
気のせいの可能性もありますが、他にも見たことのない場面があり、ゆったりとした印象(コマスピードも公開当時に近い形に操作してある)を受けます(完全版と書いた所以です)。
ノスフェラトゥ(マックス・シュレック)の顔も「ああ、こういう顔なのね」とじっくり観察することが出来ます。
テレビに超接近して見ても、鑑賞に堪えうるぐらい綺麗にデジタル補正されています。
表記だと分かりづらいですが、特典映像にF・W・ムルナウの半生とノスフェラトゥ誕生の経緯を綴ったメイキング・ドキュメンタリーが収録されています。
これを見ると、ノスフェラトゥの城等々、登場する印象的な風景が実際にはどういう場所なのかはっきりして、長年の謎(?)が解ける方も多いと思います。
条例を定めているヨーロッパなだけあって景観はそれほど今も変化していないんです。
元値(5670円)だとあまりに高いな、と思いますが、amazon価格でこれなら全然買いだと思います。
無声映画が本当の意味でデジタルになったらどういう映像になるのかぜひ、お確かめください。
吸血鬼ノスフェラートゥ 恐怖の交響曲 (F.W.ムルナウ コレクション/クリティカル・エディション) [DVD] 関連情報