主人公は大藪春彦作品史上初の女性。
女版伊達邦彦といえるほど滅法強くて、スポーツカーとサブマシンガン持って韓国人要人暗殺を企てる北のテロリストたちを皆殺しにしてゆくストーリー。もちろん、暗殺者たちは楽な死に方をさせられるわけではない。凄惨な恵美子のエログロ度炸裂の拷問に苦悶しながら痛みを感じない世界へと旅立ってゆく。そのテのものは苦手な人には絶対にお薦めはできないが、それ以外にもアクション・シーンは多く、冒頭の香港でのカーチェイスに銃撃戦と、盛りだくさんであるが、やはり拷問のシーンの繰り返しが目立って、少しばかり退屈を感じる。しかし主人公たちの野望を秘めたアクションは壮絶だ。
ラストには思わぬ形式で伊達邦彦が登場!大藪ファンには読み逃せない一冊であることは間違いない。
女豹の掟 (光文社文庫) 関連情報
満腹感で一杯だと思いきや、空腹感に襲われる感覚を初めて感じました。
人の欲望の全てが詰め込まれています。
食という生きるために不可欠なものと、死との密着感が読み進めていくうちに臭いとなって脳内に伝わってきます。
読み終えての感想としては、絶望的な人生、明日からの生活に何をすべきか悩んでいる人達にぜひ読んで欲しいと思わせる人生のバイブルです。
本当の辛さ、寂しさ、妬み、嫉妬等、負の感情の集大成が詰まっています。
しかし、読み終えた時に広がっていく不思議な感覚をぜひ読んで体験して欲しいです。
言葉で説明し難いですが、読んでもらえたら通じる気持ちがそこにあると思います。
自分のこれからの道を大きく示してくれる、時間の損を感じさせないどころか、不思議な世界の旅をし、新しい自分を見つけられる至高の一冊です。
ダイナー 関連情報
復活の日、戦国自衛隊と並んで角川映画の大作としてつくられた蘇る金狼は松田優作主演のハードボイルド映画である。国会議事堂前を真っ赤なランボルギーニ・カウンタックで疾走したり、風吹ジュンとの前張りなしでの濡れ場も話題となった。 蘇える金狼 [DVD] 関連情報
道尾秀介というと「向日葵の〜」が強く印象に残っている。いい印象ではない。悪い印象だ。優れた技術を保持しながらアレはないだろう、というものである。 しかし、本作はその印象を鮮やかに払拭した! 流麗な文章、巧みな構成、心にほんの少しの温もりを残す読後感、文芸的ともとれる「光媒の花」は道尾秀介の多面性を垣間見れる作品だ。 あくまで大きな衝撃をもたらす小説ではない。やさしく──ふわりと蝶が手に舞い降りるように──光で包み込み、ほんの少し温かい、といった印象である。 また同時に、道尾秀介らしく闇も描かれている。その両者あってこそ、「光媒の花」であるのだろう。 手軽に読めるので、ハードカバーだからと肩を恐ばらせず、手に取ってみるといい。 光媒の花 関連情報
娯楽色の強い大藪作品群だが、「野獣死すべし」は違う。鮮烈なる姿を見せながらも、静かなハードボイルドだ。松田優作の映画版ではキャラクター像こど違ったが、雰囲気は原作そのものである。テーマ曲もぴったりであった。
伊達邦彦がただのタフな野獣ではなく、青春を迎え、成長過程にある男だ。人物描写が圧倒的に違う。
その調子が続き、銃撃戦のシーンもシリアスに描かれている。「復讐篇」「渡米篇」ではその調子から脱しているが。とくに「渡米篇」ではフィリップ・マーロウやリュー・アーチャー、マイク・ハマーまでブッ倒し、闘う前からアーチャーに「おそろしくタフな奴らしいな」と感心(?)させていた。
拙者としては「野獣死すべし」の雰囲気もそれ以外の大藪作品の雰囲気も好きだ。しかし、本作は燦然と歴史の中で輝いているのは事実。これをあの時代の中で書いた大藪春彦は凄い。
野獣死すべし (光文社文庫―伊達邦彦全集) 関連情報