ポーターの論文を読みなれている人には物足りないか。
決してそんなことは無いだろう。
短い論文の中身を読めば読むほど、今日本に欠けているものは何かが見えてくるはず。
豊富なデータも、ポーター論文を補足していると言える。
書店での立ち読みでこの論文を理解できる人がいたら、
その人こそ、今の日本の課題を熟知している人なのだろう。
国の競争力 関連情報
ダボス会議シリーズは毎回コンセプトが違っていて面白いですが、今回は世界情勢を知るうえで重要な時事問題を理解することに重点が置かれています。特に経済については、現役国際金融マンならではの鋭い視点が随所に出てきますが、一般英語学習者にもわかりやすく丁寧に解説されています。
もちろん、時事英語もしっかり学ぶことができます。キーワードの解説を読んでいくうちに自然に英語の語彙が増えていくのも有難いです。また、スピーカーの顔ぶれも多彩で、世界の英語(World Englishes)の旅が体験できます。
筆者は、物事を先進国のみならず新興国や途上国の目線で考えてみることが必要、と説いていますが、本書についても、上から目線ではなく、英語学習者の立場を十分に意識した作りとなっています。
単なる時事英語学習教材という次元を超え、英語学習法、外国人とのコミュニケーションの心得などについても様々なヒントを与えてくれる好著だと思います。
ダボス会議で聞く 世界がわかる英語(CD付) 関連情報
表紙に「まんが」とあるのを勘違いしてお宅の坊やお嬢さんが持ってきたら、
迷うことなく買うなり借りるなりしてあげよう。おめでとう、それであなたの子
供も反資本主義の徒になれる。本書はタイトルとおり、反資本主義者入門
のまんがだ。上の画像だとわからないが、カバーを取ると真っ赤っかな表紙。
さすがだ、表紙からしてすでにキテるぜっ!
まずは敵情視察といわんばかりに、第一章は資本主義の解説にあてられる。
ここであなたの子息は自分の暮らしがなんと資本主義に毒されているかを思
い知るに違いない。第二章からは反資本主義、というか大きくくくって人類の
抵抗の歴史。坊やが「漢字が多くて読めないや」と不平を漏らすなら、毎晩寝
る前に数ページずつ読み聞かせてあげるもよし、学校の朝読書の際に担任
教師にわたして、教室で朗読してもらうもよしだ。
第三章と第四章では、結局失敗に終わった伝統的左翼ではない、いわばもっ
と融通の利く今の左翼についての解説、紹介がなされる。とくに四章では具体
的な活動団体、MSTやNBA(バスケットではない)、WMW(プロレス団体では
ない)の活動を紹介し、ページの下にはその運営するサイトのURLまで記載さ
れているという気合いに入り用だ。「さあ、今すぐ行動をおこせっ」ということだ。
坊やが「HP見たい」といえば、英語文を訳して読んであげるのが親のつとめっ
てなもんだ。
ただ、これは他の評者も指摘されていることだが、いつものごとく結論部は曖昧
だ。これは新旧左翼に共通することだろうが、明確な「対案」は出されない。しか
し、本書の描くような新しい左翼からすれば、教条的に上からああしろこうしろと
いうこと自体がよくないことなので、しかたなくはあるか。
これを読み終わったあなたの子供は、著者あとがきの「自分にできることを考え
て」という文言に、まずあなたへ小遣いアップの交渉を仕掛けてくるはずだ。
そのときはすかさず、「これを読んでからになさい」と『ミッキーマウスのプロレタ
リア宣言』を差し出せるように、用意しておこう。
まんが 反資本主義入門 関連情報
ブームとバブル―世界経済のなかのアメリカ (こぶしフォーラム)
洋書は2003年に出版されています。その時点において、1990年代前半のアメリカの好景気と後半のバブル経済について分析しています。これら期間に対して、1)1970年頃からの経済の変遷について確認、2)世界経済が抱える重大問題として、製造業の過剰生産力の存在、3)アメリカ経済を考える上では世界経済の理解が必要不可欠、といった事柄を軸に分析しています。豊富なデータが紹介されていることが本書の良い所ですが、それらの内、僅かなものを選んで、好況と不況を説明しており、単純過ぎるという印象も持ちました。また、本書は1970年以降の経済史のようでもあり、アメリカ経済の特異性が詳しく分かります(政治力を背景とした優位な経済的立場の形成や、不況時の過剰資本解消の素早さなど)。アメリカ経済の特徴を理解し、将来を推測するのに役立つと思います。 ブームとバブル―世界経済のなかのアメリカ (こぶしフォーラム) 関連情報
もうひとつの世界は可能だ―世界社会フォーラムとグローバル化への民衆のオルタナティブ
この本、まず執筆している人々の顔ぶれが凄い!!その扱っているテーマが広範である!!
第三世界が抱える債権問題や世界レベルでの労働問題などの経済問題から、農業や水利権の問題、そしてジェンダーや移民問題などの人権問題まで、グローバリゼーションにまつわって議論されるテーマが網羅的に扱われている。そして、それぞれについて執筆しているのは、それぞれの問題に取り組む世界中の研究所やNGOの方々であり、それぞれの分野に分け入ると必ず耳にする人々である。したがって、内容は多彩であるが、それぞれの章はそれぞれの分野の最先端の議論が紹介されている。
また、翻訳者達によって、それぞれの分野に関係する中心的な団体のホームページが細かく紹介されていて、それぞれの分野について一層深めていくことが容易なように工夫されている。ついで翻訳について述べれば、訳注がきめ細かくつけら、それが本文中に組み込まれているので、手軽に必要な情報を得つつ読み進められるように工夫されている。
この本は、グローバリゼーションを単に否定するのではない。ダボス会議やIMFそして世界銀行などによって推し進められる企業や資本の利益を優先する現行のグローバリゼーションから、人権や平等そして環境を重視したグローバリゼーションに転換することを目指している。そして、この目標に到達するために真摯に行われている、世界社会フォーラムでの議論の集大成である。
私たちの生活は、すでに世界中と深く結びついている。そして、私たちの生活形式やその変化は、世界中の人々の生活に影響を与える。私たちの生活の根幹深くに根を下ろすグローバリゼーションを見直すことで、私たち自身の生活について見直す契機となろう。そして、すでに労働運動などの社会運動に活躍する人々には、運動の指針やその目指す方向について重要な示唆を与えてくれるだろう。また、この本を読んでいると、最近大きな脅威となっているテロ問題の背景が見えてくるように思われと同時に、私たちの日常生活からテロ問題を解決することはできると、勇気を与えてくれるように思う。
この本は、一橋大学の院生たちによって訳されているが、全体的に平易に訳すことが図られたようであり、気楽に手にして大きな問題の全体像に近づくことができる好著と言える。 もうひとつの世界は可能だ―世界社会フォーラムとグローバル化への民衆のオルタナティブ 関連情報