大原富枝 商品

大原富枝 婉という女,正妻 (講談社文庫 お 6-1)

苛酷な人生を強要された女性が、誇りひとつを胸に自律的に生きた姿を、いい文章で綴っている。
わずか4歳の時、父の罪なき罪で40年間幽閉された女が、兄から四書五経を学びつつ、自分のアイデンティティーをどう守って生きたか。
竹矢来の内側に40年いて、初めて世の中というものに出て行き「川」を見たときの感銘が美しい文章で表現されていた。
閉塞状況の中で、谷秦山という学者に、運命的な恋心を抱く。
最後までプライドを捨てることなく、66歳の生涯を歩んだ婉という女から、現代人はいろいろなことが学べると思う。 婉という女,正妻 (講談社文庫 お 6-1) 関連情報

大原富枝 アブラハムの幕舎 (講談社文芸文庫)

イエスの方舟の事件に題を取った作品。
しかし、内容は、一人の若い女性の自立の物語である。
自立、というと何か、とても明るく響くが、
この作品では、それが、「母と娘」という永遠の確執からの
逃避行という形になっている。

主人公は、母が思い描く「理想の結婚」を強いられることで
窒息しそうな状況に追い込まれている。
自分の分際を極端にわきまえている、非常に潔癖な心の持ち主である
主人公は、どうしても、そういう「女の幸せ」に乗ることが出来ない。
結婚に対する、母の世代の、無頓着で厚かましいとさえ思える観念に対して、
程度の差こそあれ、息苦しさを感じている人にとっては、
心が癒される作品である。

弱い女は、結婚することが一番の幸せ。
そういう母の価値観。
主人公も、社会の中では、小さく弱い存在だ。
しかし、彼女は、違う価値観に引きずられることが、
どうしても出来なかった。
そうして取った「逃げる」という行動は、
実に弱く情けない手段かもしれない。

しかし、だれかに守られて生きる、という
ことを拒否している点で、主人公には強さがあるのだ。

この中で、やはり家族の問題から自殺してしまう女の人が出てくる。
その人の相談に乗る女性の言葉が、とても印象深い。
(どんな言葉かは、読んでみて下さい。)
家族の悩みなど、他人にわかってもらえないし、
実際に愚痴など聞きたくないと拒絶されることもある。
しかし、話を聞いてくれる人がいたら、どんなにいいか。
そういう切実な苦しみを持つものには、救いとなる作品である。 アブラハムの幕舎 (講談社文芸文庫) 関連情報

大原富枝 婉という女・正妻 (講談社文芸文庫)

苛酷な人生を強要された女性が、誇りひとつを胸に自律的に生きた姿を、いい文章で綴っている。
わずか4歳の時、父の罪なき罪で40年間幽閉された女が、兄から四書五経を学びつつ、自分のアイデンティティーをどう守って生きたか。
竹矢来の内側に40年いて、初めて世の中というものに出て行き「川」を見たときの感銘が美しい文章で表現されていた。
閉塞状況の中で、谷秦山という学者に、運命的な恋心を抱く。
最後までプライドを捨てることなく、66歳の生涯を歩んだ婉という女から、現代人はいろいろなことが学べると思う。 婉という女・正妻 (講談社文芸文庫) 関連情報

大原富枝 彼もまた神の愛でし子か―洲之内徹の生涯 (ウェッジ文庫)

洲之内徹の評伝として書名が高かったが、単行本が手に入りにくくなっていたものの文庫化である。『気まぐれ美術館』シリーズの著者としてのイメージをこの本に探ろうとして読むと、戸惑うかもしれない。ここに描かれているのは洲之内の陰の部分が多いからだ。しかも、ちょっと気が滅入るような話が書かれている。戦時下の行動を中心に非情で女好きで自分勝手で…、というイメージが続く。だが、それでは大原富枝は人間洲之内徹をどうとらえていたかというと、その紛れもない個性を認め、愛惜の念を抱いているのだ。洲之内と関わった女性たちをめぐる叙述にも客観的ながら、同性としての思いやりがにじみ出ている。

違う視点から洲之内について述べた関川夏央の解説も良い。美を見る眼の背後に、いかなる人間ドラマがあり、それがいかにしてたぐいまれな美術エッセイへと昇華されていったのか。それを考えるためには、やはり必読書だと言える。 彼もまた神の愛でし子か―洲之内徹の生涯 (ウェッジ文庫) 関連情報

大原富枝 草を褥に―小説牧野富太郎 (サライBOOKS)

 『サライ』に1999年1月から2000年10月まで連載されたもので、大原はその直後に死去している。そのため結末の部分が、牧野植物図鑑の謝辞の引き写しのようになっている。
 概して牧野については、学歴がなくて認められなかったとか言われるが、これは牧野が豪商の家に幕末期に生まれ、既に明治初期に十分な学力をつけたと自負したためである。「スエコザサ」で知られる妻樹衛子だが、それ以前にいとこの猶と結婚しており、ただ京都の芸妓の娘だった樹衛子と、妊娠させてずるずる一緒になったこと、実家を破産させたというのも、学問に打ち込んだからというより、人力車を乗り回すといった贅沢ぶり。なぜか牧野の生涯は映画化とかされないのだよなあ。なんでだろう。大原が死んだため津本陽が解説を書いているが、妙に冷淡である。 
 しかしまあ、博士号をとったら教授にしてもいいじゃないかと思う。東大のケチ。  草を褥に―小説牧野富太郎 (サライBOOKS) 関連情報



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